13日・AM











「お誕生日おめでとうスクちゃん!」

「おめでと、スクアーロ」

「いちおう祝ってやるよー」

「…くだらん」

「そんならなんでここにいるんだぁお前…」


 ヴァリアー本部の談話室というのはロココとゴシックを足して2をかけてアンティークで埋めたような、趣味が悪くならないのが不思議なインテリアで整えられている。落ちついていて居心地もいい。標準よりすこし暗めのやわらかい照明は暖炉の炎に助けられて障害になるほどではなく、暖炉はもちろん本物のレンガ造り。どんな金持ちの趣味人が何を考えてつくり整えた場所なんだか知らないが、そして名前のように談話目的で使われることは皆無だが、隊員はみんなこのすばらしい空間を愛することになる。ところでその愛すべき部屋の現状といえば。
「つーかなんだぁこの、誰が片付けんだ、これ」
「いやだスクちゃんそれは飾りよ!」
「ナターレのやつ出してきたんだろぉ?じゃなくてその紙の鎖みてーなの」
「それも飾りだよ」
「ツリーいっこのだけじゃ地味だったしーもうひとつかふたつぶん買ってこようとしたらツナヨシにとめられてぇ」
「待て、ツナヨシって、う゛ぉいどっから出てきたぁ」
「えーなんかいた。そんでおれらが買うようなのは値段やばいからやめろって。どうせ経費だっつったらもっとやめろってさ!あいつちょーむかつくねまださぁ10代目違うくせにもったいないって何?ジャポーネのジョークてさっむいよマジで。で・かわりにこれつくれって、殺そっかなって思ったけどちょっとおもしろそーだったから」
「ベルって意外と単純作業好きだよね。黒と金と紫と緑の配色はどうかと思うけど」
「ナニ?マーモン王子のセンスにけちつける気?」
「正直悪趣味」
「うっわちょっと死んじまえよ。とりゃ」
「ベルちゃんフォークは投げるもんじゃないわ!あんたがやるとシャレにならないんだからっ」
 というわけで、白いモールやガラス玉や星に加えて黒と金と紫と緑、あるいは妙にまっとうなポップな配色の紙製のわっかをいくつもつなげた…住人たちは知るよしもないが、日本の七夕には笹に巻きついていたりする…飾りで普段に増して華やかな談話室なのだった。テーブルには豪華な料理が並び、これでその上をナイフやフォークやスプーンが飛び交っていなかったら立派な誕生パーティの会場になるのだろうけど。
「食器がなくなるぞ」
「困った子たちねぇ…グラスには手を出さないといいけど」
「…おまえら俺祝おうとしてたんじゃねーのかぁ!?」
 ルッスーリアとレヴィは乾杯もなしにワインを開け、ベルとマーモンは物騒な射的ゲームに興じている。だからそのときほったらかしにされたスクアーロが、そっと近づきキュンキュンと花を差し出したモスカに抱きついたのは、この場にはいなかったがもしザンザスが見ていたとしても不可抗力として見逃してくれたことだろう。





 ところでこの時点でなんとなくうやむやになっているスクアーロの疑問がひとつ。
『待て、ツナヨシって、う゛ぉいどっから出てきたぁ』
 どこからといえば日本から。目的というなら、もちろん、スクアーロの誕生日を祝いにだ。











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