つ、となめらかな肌に指先をすべらせ、きつくくちづける。
宵闇にたゆとうシーツの海よりなお白い肌に、血の色をした花が散る。
「…何をなさっているのですか、陛下」
憮然とした声がおかしくて、くすくすと笑いながら答える。
「いたずら」
闇の向こうでジェイドはため息を吐いたようだった。
構わずにまたひとつキスを落とせば、今日はもう帰りますと疲れたような声音で言った。
そのまま起き上がろうとする肩を押さえて覆いかぶさる。
「行っちゃだめだ」
「…残してきた仕事がたくさん…っ」
半ばあきらめの混じった言葉を己の唇で封じこめる。
「………ふ」
角度を変えて更に深く重ね合わせれば、殺し切れなかった吐息がこぼれる。 勢いにのせて、次々とくちづける。わずか汗ばむ額に。上気した頬に。細い首筋に。紅の花が乱れ咲く。


「…今、世界が終わればいいのにな」
なんとなくそんなことをつぶやけば、素っ気ない調子でジェイドは言う。
「いいわけがないでしょう」
それはそうだ。
だって本当に終わりを望んでいるわけじゃない。
俺の側にはおまえがいて、それはおまえを失う前に世界が終わってくれることよりもはるかに大切で。


ああでも、今はとりあえずなんでもいい。
おまえはここにいるのだから。
とりあえずは、それだけで。


ゆっくりと身体を重ねながら、彼は静かに微笑んだ。













20070421
友人宅の開設記念に