ある日、コンビニに強盗が入りました。
強盗は拳銃を持っていました。強盗は人質をとって立てこもりました。人質はアルバイトの女の子です。
「くそっ、もうサツが来やがった…てめえが余計なことしやがるから」
女の子はとっさに警察を呼ぶボタンを押していたのです。強盗は女の子を殴りました。拳銃のグリップで何度も何度も殴りました。
「てめえのせいだてめえのせいだてめえのせいだ」
女の子は血まみれになりながら、なぜ私はこの人にこんなひどいことをされるんだろうと考えました。
さかのぼって四百年ほど前のことです。
百姓の男がいました。大きないくさのあと、男は山狩りに参加して手負いのお侍の首をとりました。お侍が連れていたしのびは腕と脚を一本ずつ失い、横腹は致命的にえぐれていましたが、あるじのむくろを抱いて叫びました。
「許さない!許さない!許さない!許さない!七代先まで呪ってやる!」
男は気味が悪くなり、その場でしのびも殺しました。
この男が女の子の先祖です。
「てめえのせいだてめえのせいだてめえの」
女の子は強盗の目の中に一瞬つめたい暗い憎悪の炎が燃え盛るのを見ました。
次の瞬間、女の子は額のまんなかを撃ち抜かれていました。
(七代先まで呪ってやる!)
ほどなく強盗は警察に捕まりました。調べに対して強盗は「殺すつもりはなかった。なぜ撃ってしまったかわからない」と話しました。
強盗の髪は脱色を繰り返し、パサパサに白茶けていました。取り調べ室の薄暗い照明の下で、それは気の抜けたオレンジ色にも見えました。


(七代先まで呪ってやる!)













20080903